その他2021.11.17
咬合採得〜ちゃんと噛み合わせを採るのは難しい〜
歯の形を失ったり、また歯そのものを失った事による機能回復、審美回復、正常組織の保全を目的とする治療を補綴治療といいます。
現在、口腔内スキャナーはありますが、金属を使用する場合、入れ歯を作る場合には
削って形を整える(プレパレーション)→型を採る(印象採得)→噛み合わせを採る(咬合採得)→補綴物作成
という流れで治療が進みます。
どの工程も重要で、うまく削れなくても、うまく型が採れなくても、うまく噛み合わせが採れなくても、技工操作がうまくいかなくても、絶対に適合が良く機能的で審美的な補綴物は作成出来ません。
その中でも最も難しい症例は「咬合採得が難しい症例」だと思います。
歯冠補綴物(クラウンブリッジ)、有床義歯(部分床義歯、全部床義歯)、どちらを作るにしても、動かない上顎と動く下顎の関係性の運動の終末位がとても重要になります。
この運動
つまり「動く下顎」
これが最も不確定要素を生むのです。
例えば
・長い間、歯が抜けた部分を放置してしまった場合
・歯並びが変わった場合
・既に補綴物が多く入っており、元の噛み合わせが変更されている場合
・顎の運動を行う顎関節、神経、筋肉の調和が取れていない場合
・歯周病が重度になり歯が揺れたり位置が動いてきた場合
この様な場合は顎の運動の終末位が定まらない場合があります。
また、姿勢、習慣、良く食べる食べ物の種類、歯を接触させる癖などによっても影響を受けます。
適合が良く、よく噛めて美しい補綴物を作る事は歯科医院にとっていつの時代も重要な仕事です。
しかし壊れた状態を正常に戻していくのは容易ではありません。
まして悪い状態の期間が長ければ長いほど、人間はその状態に適応するために習慣を変えて、それが筋肉と神経の不調和を引き起こします。
一度ついてしまった習慣を改善するのは本当に難しいのです。
簡単な症例は誰がやってもうまく治せます。
逆に難症例は誰がやっても難しいのです。
難症例にしない為には
「歯を削らない事」
「歯を抜かない事」
「歯周病を放置しない事」
結局そこに着きます。
歯が1本無くなっても食事にはさほど苦労しないかもしれません。
奥歯が2本無くなっても痛みは感じずに「いつか治さなきゃ」と思うかもしれませんが、忙しければ放置してしまう事も多いでしょう。
入れ歯が合わないと感じていても、痛みがなければ「そのうちに・・・・」と思いながらもそのままにしてしまう方も多いでしょう。
でもその期間にずれが大きくなっていきます。
歯が無くなったり、調子が悪いと感じたら早めに受診し、難症例にしないように気をつけましょう