歯の豆知識2022.09.19
自家歯牙移植手術って誰でもできるの?
「移植手術をして欲しくてここに来ました」
という患者さんが最近、結構いらっしゃいます。
御紹介の患者さんは他の医院の歯科医師の先生に勧められていらっしゃっていますが、それ以外の患者さんはきっとネットでなどでお調べになって当院に辿り着いたのだと思います。
移植手術自体は他の医院でも多くの医院が行なっていると思いますが、わざわざ県を跨いで来られる方もいらっしゃいます。
何故わざわざ遠くまで来られるのかと理由を考えてみました。
正直、インプラント治療の様な利益は医院にもたらさないし、成功率が低いと思っていらっしゃる先生も多く、本気で勉強して取り組んできた先生が少ないのは事実です。
私が移植手術を積極的に選択するのは、そもそも自分が移植手術を受けた経験者である事と、月星先生の行う移植治療も結果を見て感動したからです。これはあくまで自分にとって心を揺さぶられた経験であり、同じ本を読み講義を受けてもそれぞれの先生によって個人差はあると思います。
移植手治療がインプラント治療と比べて最も優れているのは、インプラント体には歯根膜はないけれど歯には歯根膜を有している事です。
歯根膜は治癒過程において骨を誘導して、治癒後は自分の組織であるが故に本来の免疫機構を有し、かつ咬合圧を感知する感覚もあることです。
移植がただ歯を抜いて植えるだけならばさほど成功率に差は出ないのでしょうが、やっぱり沢山やると分かるコツはあるのです。
適応症例であるかの判断と成功率をあげる為の治療をルーティーンで行っているかという事がとても大切だと思っています。
適応症例は若年者ほど成功率は上がります。
また、ドナー(新しく植える方の歯)となる歯の大きさ、形が移植に適切かどうか
歯根膜の量は十分にあるか(これはとても重要)
レシピエント側(植える方の骨)に十分なスペースがあるか
全身疾患で、服薬などが障害にならず手術を行えるか
喫煙習慣はないかなどです。
一般的に全体的な重度歯周病は適応とならない事が多いです。
成功率の高い治療のルーティーンとはシンプルです。
おそらく世界で最も多くの移植手術を行ったであろう月星光博先生の本に書いてある事をしっかり守ること
軟組織(歯肉)が足りないという状況を防ぐ事
移植した歯の根管治療を唾液を排除してしっかり行う事です。
そして歯がなくなってしまう事には理由があり、事故は不測の事態ですから仕方ありませんが、その後の歯を失いにくい習慣を行い続けて頂く事も大切です。
適切に診断する為には
医療面接による患者さんの情報の把握
レントゲン、CT画像による診断
噛み合わせのチェック
を行います。
「もし、自分にも可能性があるなら・・・」と思われる患者さんがいらっしゃれば、その希望の旨を御連絡いただき、お伝えください。
すでに通院されている患者さんはカンファレンスで必ず全ての治療オプションを検討していますので、移植を提示しないときは適応範囲外と診断しています。