歯の豆知識2022.09.23
クラウン、ブリッジ補綴治療はどうすれば上手くいくの?
補綴(ほてつ)とは、歯科治療における補綴とは、歯が欠けたりなくなった場合にかぶせものや入れ歯などの人工物で補うことをいいます(社団法人日本補綴歯科学会)。
歯を失うと口もとの審美性(見た目)や咀嚼や発音といった日常生活に必須の機能が妨げられ、著しく生活の質(QoL)が損なわれます。それだけではなく、歯がない状態を長期間放置することにより、残った歯の位置が変化し、歯並びが悪くなったり噛み合わせが変化して、2次的に虫歯や歯周病を引き起こしたり顎関節症になったりすることがあります。また、全身的な健康へも影響があり、歯が失われて消化器官としての口腔の機能が損なわれると他の消化器官への影響が危惧されます。さらには健全な咀嚼機能を維持することが脳の活性化にも役立つことが報告されています。
1本の歯の形を人工物で作った被せるものを「クラウン」と言います。
クラウンとは王冠の事ですが、下顎の6番目の歯はまさに王冠の様な形をしています。
虫歯の感染により歯髄を取った「無髄歯」である事が多いです。つまり歯髄を取った後の根管治療がしっかりやってあるかが、被せ物の種類を考える前に重要になります。
根管治療は例えるならば建築の基礎工事の様なもので、目には見えない部分だけれど、被せ物の素材よりも重要な治療です。
残念ながら日本においては根管治療の成功率は低いです。
これは保険治療において重要ではあるのに根管治療の点数が低く、機械、器材を揃えて一生懸命トレーニングをして真面目にやればやるほど赤字になってしまう事も関係しています。
大臼歯で歯髄を取った歯は一見詰め物だけで治せそうでも、歯全体を被せるのが鉄則です。多くの場合は強度が足りずに歯が割れてしまうからです。
また、見た目を改善する為に歯を削り、表面がセラミックの歯を被せて綺麗に見せる事もあります。よく芸能人の方が前歯だけ白い歯に変えているのがこの方法によるものです。「審美補綴」と言います。
いずれにしてもクラウンで被せる場合は歯を大きく削っています。
永久歯は爪や髪と同じ様に「死んだ組織」です。
虫歯で歯を削るのは、死んでいる組織なので再生しないから、汚染された部分を削るのです。つまり多くの虫歯治療は「引き算」です。
歯は削ると強度は弱くなります。
特に歯髄を取った歯は割れやすくなります。そこで「コア」という土台を、失った歯質に応じて適切な長さ、太さの土台を入れます。
そして残った歯が割れない様に、歯全体を掴む様にしてクラウンを被せるのです。
ですので、歯肉の上に「フェルール」という残っている歯質の量が1ミリ以上ある事が望ましいのですが、虫歯が大きかったり外傷で歯が割れてしまった場合は歯肉の下まで歯質が無くなってしまっている事も多いのです。
前歯、小臼歯であれば矯正で歯を引っ張り出す事(エクストリュージョン)や、手術で歯肉を切ったり骨を削る事で歯を歯肉の上に露出させる「根尖側移動術」を行います。
骨の下まで歯質が虫歯で無くなったり折れてしまった場合は一般的には抜歯の適応になります。
これは歯を作っても歯質が割れてしまう可能性が高い事と、歯肉の下は滲出液が出ているので、十分な接着が得られない為です。
成分的に歯と骨と似ています。
骨は細胞が骨を再生するので骨折しても固定してあげる事でくっつくので折れたところを切断する必要はありません。
しかし歯は折れてしまうと死んだ組織同士なのでくっつきません。ですので垂直的歯根破折に対して、接着再植といって、一度歯を抜いて折れた歯を口の外で接着してから骨の中に戻す治療もありますが、咬む力をかけると再び割れてしまう事も多いのであまりお勧めはしていません。
ちょっと取り止めもない話になってしまいましたが、
今回はクラウンを被せる治療において、押さえておきたいチェックポイントについてのお話でしたが
①根管治療が適切にされているか
②歯肉の上に十分な量の歯質が残っているか
③土台となるコアが適切な長さ、大きさで入っているか
④見た目の解決の為に歯を削るとしても、患者さんはデメリットも含めて理解した上で同意の上で治療が行われているか
⑤歯周病などで歯を支える骨、歯肉の状態が健全であるか
という事が重要です。
クラウンやブリッジのお話をする時に、どうしても表から見える素材に目が行きがちです。
しかし、建築と同様に、壁紙や床材、インテリアをどうするかの前に基礎工事や骨組みがしっかりしているかが大切なのです。
その2で材質についてのお話をしたいと思います。