歯の豆知識2022.10.27
歯の根本の歯が欠けているのはどうして起こるの?
歯の根本が欠けてしまって、冷たいものがしみる、という患者さんも多くいらっしゃいます。
この写真で根本が削れているのが見えると思います。
これは歯医者さんも歯科衛生士さんも長らく「歯に過度な力が加わったことで出来た」と習ってきましたし、昨年の歯科衛生士国家試験にもそういう答えで出題されています。
アブフラクション、と呼ばれていました。現在ではこれは不適切な用語となっています。
私達が習ったことが全く否定されて、常識が非常識になることを「パラダイムシフト」と言いますが、まさにこれはパラダイムシフトでした。
簡単に言うと、実験で歯に力をかけて根本の歯が欠けてくるのかを再現すべく実験したものの、再現できなかったのです。
正しい原因は、象牙質の露出した歯に対して歯磨き粉を使った不適切な歯磨きによって引き起こされるのが原因ということになりました。
これは実験で再現することができたからです。
専門用語で言うと「NCCL →Non Caries Cervical Lesionの略。日本語で 非う蝕性歯頸部歯質欠損)と言います。
これが起こる発端は象牙質が露出することです。
つまり、強すぎるブラッシング圧や歯並び、歯周病などの原因で象牙質が露出した部位に、研磨剤の入った歯磨き粉で強く磨くとこの様な歯の根本がえぐれた様な欠損が出来上がるということです。
治療方法はコンポジットレジンという樹脂で失った歯の部分を詰めて研磨をして治します。
そして原因は歯磨きの圧と歯磨き粉ですから、適切なブラッシングのやり方の指導と、歯ブラシの種類(硬めは絶対ダメ)歯磨き粉の種類を選び直します。
じゃあ歯磨き粉は使わない方が良いのかというと、これも違うのです。
虫歯予防にフッ素はとても重要です。
論文上で言えば、歯磨きで虫歯は予防できなかった。
しかし、シュガーコントロール(砂糖を取らない)ことと、フッ化物応用は虫歯を防ぐのに有効であった、というのが正解です。
ですので、虫歯予防の観点からするとフッ素の含まれている歯磨き粉の使用はするべきです。よく
「歯周病予防の成分と虫歯予防の成分、どちらが入っている歯磨き粉を使うのが良いの?」
というご質問を頂きます。
歯周病治療、予防においては、バイオフィルムの除去(減らす)が、歯磨きの目的になります。
虫歯予防ではフッ素を歯に付着させた状態をある一定の時間作ることが目的になります。
ですので、歯磨き粉はフッ素の濃度が高いものを使いつつ、強い力で歯磨きをしない様に気をつけるけれど、丁寧にやるのが良いと御説明しています。
モリタのトリニティコアというソフトに歯の根本が欠けるのは「アブフラクション」という根本に力が集中するから歯が欠けるのだというアニメーションがあり、私達もその様に患者さんにご説明をしてきましたが、それは結果として最新の研究では間違いでした。
そういう教育を受けてきたのでやむを得なかったのですが、その様な説明をした患者さんにはこの場を借りてお詫び申し上げます。