医院ブログと歯の豆知識

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歯の豆知識2023.01.30

自家歯牙移植手術について

ある患者さんが御紹介で来院されました。

紹介先は名古屋の月星光博先生からでした。

元世界外傷歯学会会長で、世界50カ国以上で講演をされてきた先生です。

外傷歯、移植においては世界的な権威です。

若き日に、歯周病治療の基本、根管治療、外傷歯の治療、移植手術について名古屋まで何年かセミナーに通い、色々教えて頂きました。

今の「はらデンタルクリニック」の診療の根本となっているのは月星先生の教えがベースになっています。

御紹介の内容は

「埼玉から泊まりで移植の相談にみえられた患者さんに移植手術を行なったので、抜糸と固定、その後の根管治療などをお願いしたい」

ということでした。

自家移植手術は、失った歯がある場合、代わりになる歯として親知らずや矯正の便宜抜歯などの歯がある場合の行う処置です。

移植手術の最も優れているのは「自分の細胞である」という事です。

歯を失った場所に歯を作る方法は他に

①インプラント
②ブリッジ
③入れ歯

という方法があります。

それぞれ、利点、欠点がありますが、
インプラントの様に異物を体に入れるのではなく
ブリッジの様に両隣りの歯を削ることなく
入れ歯の様な煩わしさがない

という意味においては失った歯と同等の大きさの使用していない歯という条件さえ合えば最も優れた方法であると思います。

年齢は若い方がうまくいきます。
しかし、歯を失うのは実は中年の方が多いのと、失った歯と親知らずの大きさが概ね同じかなどの問題があり、中々理想的な状況の移植というのは少ないです。

月星先生の医院には世界的な権威なので遠方やコロナ前は海外より患者さんが、先生の技術を求めて来院されるそうですが、なかなか条件が合うことは少なく残念ながらお断りするケースも多いとのことでした。

実はその患者さんは埼玉県で所沢の隣りの市にお住まいで近くの歯科医院に通っており、大学病院を紹介されて、そこで治療を受けた後にその後名古屋の月星先生を紹介され、月星先生が移植手術を終えて、名古屋まで通うのはあまりに遠いので同じ埼玉県の当院に後の処置を依頼されたという経緯でいらっしゃったことがお話を聞いて分かりました。

勿論、月星先生は移植や外傷歯の治療においては第一人者と言っても良いでしょう。勿論、世界の月星先生に私は足元に及ぶものではないけれど、当院の周囲にお住まい患者さんにある程度の結果の出せる施術を行う医院があると認知して頂くことは大切だと思いました。所沢にも当院だけではなく、行っている歯科医院はあります。
自家移植手術は職人しか出来ない特別な処置ではありません。
結果の出る自家歯牙移植術が世の中に広め、患者さんに良い医療を提供する為に月星先生はセミナーをやっておられるのだと思います。
医学的根拠に基づく医療は、再現性のあるものであり術者を選びません。
ただしそれを行う歯科医師が、正しい術式を知り、押さえるべきポイントを押さえて治療を進める必要があります。勿論、経験という要素
歯肉が抜歯窩に移植歯を収めたときに十分な量があり隙間なく植えられる、細胞の治癒を考慮した治療の間隔で処置を行う、などを守れば、人の再生力で再び歯を取り戻すことが出来ます。

因みに一般的な術式は

①保存不可能な歯の抜歯
②3週間後、移植手術を行う
③1週間後、抜糸
④移植より2週間後、移植歯の根管治療を行う。ただし根未完成歯の場合は歯髄が生き返る
⑤1ヶ月後、根管治療の終了。固定を除去。固定は外さず動揺が大きい場合は2ヶ月に遅らせる
⑥2ヶ月後、若年者以外の固定の除去
⑥移植より3ヶ月後コンポジットレジンによる修復 もしくは補綴(被せ物を作る)処置をして噛めるようにする

という間隔と順序で治療を行います。

結果の良い治療を行う為には適応症例であるかの診断が重要です。
歯の大きさ、歯根の形、残っている骨の状態、年齢、全身疾患の有無、口腔内の状況など考慮すべき条件があります。

もし、当院近隣で抜歯しなければならない歯があり、移植手術を検討されている患者さんがいらっしゃれば、このブログが少しでもお力になれたら嬉しく思います。