その他2023.03.22
今、小冊子執筆中です。その「はじめに」
今、患者さんにお知らせしたい口の中に情報を患者さんや当院に来ていなくてもお伝え出来る様に小冊子を執筆しています。
今年で開業して15年、4月から16年目に入ります。
患者さんがむし歯や歯周病、失った歯の補綴についてその治療方法を選択するためには、歯科医師がどういう理由で患者さんに治療を提案しているのかを知って頂く必要があると思っています。
患者さんがどんな治療を選んでも構いません。大事なのはメリット、デメリットを理解して頂いた上で、御自身の意思で選ぶことです。
以下、冊子本文です。
はじめに
2008年4月1日、はらデンタルクリニックが誕生しました。
院長になった時、私は33歳で歯科医師になって7年目でした。
当時の私は今とは全く違う価値観で生きていたし、診療をしていました。
それまで1人の患者さんを長い期間、拝見するという事をしていませんでした。
今は開業から15年間、ある程度の年月を拝見させて頂いている患者さんも増えてきました。
理論だけではなく、実際に自分の経験から経験の学び、当時と今と決定的に違う考え方があります。
それは、「治療だけでは人の健康を守る事は出来ない」という事です。
むし歯、歯周病は口の中にいる口腔常在菌によって引き起こされる生活習慣病です。
歯並びですら、生まれ持った遺伝的要因もありますが、後天的な習慣的要因が大きく関係しています。
「習慣が人生を創る」
事を、私達医療従事者は勿論、患者さんと共有する事が重要だと考えています。
むし歯を作る習慣
歯周病になる習慣
歯並びが悪くなる習慣
これらの継続の結果として「むし歯」「歯周病」「歯列不正」という見える形で表面に現れてきたのです。
勿論、遺伝的要因は無い、ということではありません。
私達、歯科医療従事者が患者さんと共有すべき目的は「お口の中の事で悩まない事」です。
見た目、機能に悩まない健康な未来を手に入れるお手伝いをする事です。
遺伝情報を変える事は出来ない以上、変える事ができる習慣に対してフォーカスを当てて考え、行動する事が、患者さんの健康を守る為に最も効果的なのです。
ですから、良い歯科医師であるという事において、高い技術を持っている事はあくまで能力の一つに過ぎません。
病気の原因となる習慣が患者さんにあるならば、歯科医師や歯科医院スタッフと関わることにより、患者さん自らが今までの考え方や行動を変えようと思う様な情報伝達が出来る事もとても必要不可欠な能力です。
若い時、私は「しっかりした治療が出来れば人は治る」と考えていました。
それまでの臨床や勉強で僕が見てきた診療の中で治療技術が高い先生が患者さんを治せる歯科医師だと信じて疑いませんでした。ですから、高い技術を身につける為に何千万円ものお金を投資して学び、実践し、今では若い頃には出来なかった技術を身につける事が出来ました。
しかし、開業してから身につけた高等な技術を実際に患者さんに提供し良い結果が出ている治療であっても、長い目で見ると治療の技術や材質だけでは不十分で、新たに問題を引き起こす事を時間の流れと共に思い知ります。
若い頃、私は病気を「点」として捉えていました。
今、患者さんはこういう症状だから、この技術を使ってこの材料で治す、という事。
しかし、実際に患者さんの人生も病気も「線」なのです。
患者さんの人生が続き、時間が流れていく限り続く「線」です。
ですから、現在の状況だけではなく、病んだ原因を遡り、現在の状況を検査、診断し、患者さんが何に悩み、何を望み、未来に為に何が出来るのかを伺った上で治療方法や素材を選択し、アフターフォローをする必要があるのだと痛感しています。
病気を線で考えると
治療に至るには病んでしまった原因があります。
治療は過去に対しての対処です。
治療方法の選択と予防処置は未来に対しての選択です。
私達はお手伝いはできても、患者さんの人生の選択は患者さん自身が行わなくてはなりません。
今回、この小冊子を作成するに至った理由は「患者さんが治療方法を決定する為に必要な情報伝達を行う為」です。
患者さんにとって、あえて外科処置で痛い思いをしたり、治療期間が長かったり、健康保険外で高額な治療を受けたい方はいらっしゃらないと思います。
しかし、あえてその方法も選択肢でお話ししなければならない時があります。
何故、私達歯科医師、歯科衛生士が方法や優先順位、材質について考えているのかを知って頂き、その上で患者さん御自身が納得いく選択をする一助になればと嬉しいです。