医院ブログ2023.09.23
「ブリッジ」ってどうなの?
歯がなくなった時に、歯を作る方法のひとつに「ブリッジ」があります。
結論として、あまり私は好きではありません。
おそらく歯科治療で最もトラブルの解決が難しくなる可能性を持っている処置だからです。
今までの歯科医師人生で、解決が難しい問題は全て「噛み合わせ」にまつわる処置です。
ブリッジが何故、複雑になるのか。その理由は
①健全な歯質を削ること
②大きく噛み合わせを触ること そしてその完全な回復が難しいこと
③補綴物が繋がっているので、本来は1本1本歯は動くが、その動きを阻害すること
④補綴物が繋がっているので、清掃不良になりがちで、二次的なむし歯などでやり直す時は、問題となる歯は1本でも、繋がっている全ての歯をやり直す可能性があること
⑤型を採る、模型を作る、模型を分割する、ワックスでブリッジを作り金属に置き換える、というそれぞれの工程で少しづつ歯科材料は膨張と収縮を繰り返すので、ブリッジが長くなるほど口の中との状態とのずれを生じやすい
という事です。
「噛み合わせ」
というのは非常に繊細で、学問的には「大体こんな感じで」という、指標はありますが、患者さんにとっては感覚の差が以前の状態との差が許容出来ず、ずっと不快感を抱えることになる方もいます。
決して患者さんがクレーマーと言っているわけではないです。
しかし、l患者さんの感覚は、私達が完全に分かるものでもなく、また、私達もあらゆる検査はしたり、やり直しをしたりしますが、結果として解決が難しい場合もあります。
特に保険診療では、正直に言って、やれることに限界があります。
これは医療観の問題ではなく、精密の固定式ブリッジを作る時にかかる経費が保険点数の中には組み込まれていないからです。
咬合採得、咬合器への付着、トリートメントレストレーション(仮歯)の作成と調整
これらを正確に行うのに歯科医師、歯科技工士、がどれだけの手間と費用をかけなければいけないかを患者さんは知りません。
歯のどの様に欠損しているか、患者さんの元々の噛み合わせ、習癖、などにより複雑さは異なります。
現在、通院されている患者さんに中でも当院でやったブリッジ、他院でやったブリッジで、この「噛み合わせ」に苦しんでおられる患者さんもいらっしゃいます。
私達はどうにか患者さんの苦しみを解決したいと思って処置を行いますが、決して良い結果が出ているとは言えません。
ですから、出来ればブリッジはやりたくない、というのは私達の本音です。
勿論、問題なく治療が終わる患者さんの方が圧倒的多数です。
しかし、少数でもずっと苦しみを訴える患者さんに対してどうするべきか、ということ考えると、時間は戻せないけれど
「もし、過去に戻り、歯を抜いたり削ったりしなかったなら・・・・」と思うのです。
多くの患者さんが保険診療で費用をかけずに治療をしたい。
それは分かっています。
しかし、現状の歯科技工士さんと歯科医院の置かれる状況を見ると正直、限界があるのも事実です。
ですので安易に「ブリッジ」を選択することの危険性を私達歯科医師は再度認知しなくてはならないし、「噛み合わせ」を触ることの難しさや危険性を患者さんにもどうか知って頂きたいと思っています。
決して全てのブリッジを否定しているのではありません。
インプラント治療に不適だったり、義歯じゃなくブリッジで治療した方が良い場合も多々あります。
ただ、天然にあるものを人工物に置き換えることはやはりリスクを伴うのです。
ですから、歯はなるべく抜きたくないし、削りたくない。
予防を若いうちからして、歯に困らない人生を送って頂きたいのです。
だから
そもそも、削らない、抜かない為に出来ることをお伝えして、行動して頂きたいのです。
むし歯にしないこと→シュガーコントロール、フッ化物の応用、メインテナンスでの通院
歯周病にしないこと→中高生での歯磨きの技術と習慣を身につけること、喫煙しないこと、定期的にメインテナンスに通うこと
これを「うるさい!」って言われても、最も伝えたいと思っています。