医院ブログ2023.10.19
歯磨きでむし歯は防げない?
火曜日は1ヶ月に一度の歯科衛生士の研修を行いました。
毎月フリーランスの井上和先生に来て頂き、午前中を座学、午後を実習と臨床の相談をして頂いています。
歯科医院に来る患者さんは
①むし歯
②歯周病
③不正咬合(悪い歯並び)
この3つの病気は「生活習慣」によって引き起こされるものです。
むし歯は砂糖の摂取が歯磨きの上手か下手かよりも大きな原因です。
歯周病は歯磨きの質 糖尿病などの免疫を弱める全身疾患の罹患 喫煙習慣 先天的な要素
歯並びは幼少期の呼吸、嚥下の癖により成長の障害を生じることで悪くなります。
つまり、習慣を変えなければ、いくら技術を駆使しても原因が残ったままなので、病気は良くなりません。
むし歯、歯周病、歯並びが一時的に良くなったとしても再び、問題を引き起こす事を長い時間見てきました。
ですので、私は院長として、衛生士には「歯磨き屋にはなるな」
と話をしています。
衛生士にとって大事なのは、患者さんや患者さんの御家族が自立して、口の中に健康を損なわない習慣を情報として提供し、その習慣を継続できる支援をする事です。
その為には正しい「知識」が必要で、更にそれを患者さんが行動を引き起こす決心をするに至る「伝達力」を持っている事が最も重要な必要なスキルだと考えています。
歯石を上手に取るとか、ホワイトニングが出来るなどの手仕事も勿論大事ですが、身につけるスキルの順番としては
①知識のインプット
②説明の練習などでのアウトプットと患者さんの行動を変えるに至る伝達力の向上
③レントゲン写真読影、口腔内写真の撮影、正確な人によって差のない歯周病検査、その他診断に必要な検査が適切に出来る事
④検査結果を理解してから正しい診断を行い、治療プランを立案できる力
⑤適切な施術
⑥治療後の健康維持のメインテナンス 習慣と共にメインテナンスの継続の支援
この順番だと思います。
歯科医師も歯科衛生士も手仕事が出来れば仕事ができると思いがちです。場合によっては患者さんもいわゆる「手仕事」が出来る歯科医師や衛生士が優秀だと思っている患者さんもいます。
勿論、技術なき理論は空虚です。
同時に理論無き技術は暴力です。
手仕事の上手さは大事ですが歯科医院で医療行為を行う上での一部の能力に過ぎません。
勿論、私も多額の費用と、時間と、経験をして身につけてきました。
高い技術を身につければ「治せる」と信じていたからです。
高価な機械や材料、有名な先生、自分にない色んなものがキラキラして見えて、それが欲しくてたまらなかったけれど、実際に手にしてみたら、魔法の杖などありませんでした。
高い技術を有していたら重症症例を治せるかというと、そうではありません。
難しい症例は誰がやっても難しいのです。
だからこそ、重症化させない為に何が出来るかの方が、医療行為としてははるかに良い成績を出せるのです。
理論や診断があり、やるべき治療があり、それを遂行できる事が重要です。そして何よりも病気になった原因を修正しなければ、結局むし歯、歯周病、不正咬合という病気は再び引き起こされるのです。
まずは理論があり、それを調べる検査が出来て、結果を正しく分析出来る診断力がある
しつこく言いますが若い時こそ身につけるべき能力です。
午前中の症例検討、座学の後に、午後は実習、診療後の夜は院長の私(残念ながら患者さんにいうほど清掃状態は良くないので、実習には最適)を使ってスケーリング実習を行いました。
若手衛生士も井上先生や先輩に施術をリアルタイムに見てもらいながら行う事で、受けている私も彼女達が上手くなっていくのが感じられました。
毎月、火曜日の1日は研修で時間を頂いている事で診療が制限され、また歯科医師も診療で出勤しないことも11月は多いと思います。
ご迷惑をお掛け致しますが、歯科医師、歯科衛生士の成長なくして医療水準の向上は見込めません。
御理解、ご協力の程宜しくお願い申し上げます。