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歯の豆知識2023.10.19

歯周病治療のガイドライン

以下はうちの衛生士チーフ矢島美紀が教育と自分の学びの為に歯周病治療のガイドラインを読みまとめた内容です。
患者さんが読んでも全くわからない訳ではなく、まとまっていると思いましたので、歯の豆知識として掲載させて頂きます

歯周病

歯周治療ガイドライン
〜必要ワード〜

歯周病の定義
☞歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患。生活習慣病。

歯周病の新分類(2018年米国歯周病学会)
最も大きな変更は歯周炎の分類
旧 侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の2つに分類
新 ↑1つにまとめ、ステージとグレードに。

1、限局型or広汎型
2、これまでの慢性か侵襲性か
3、ステージ
4、グレード    の順でみる。

歯肉病変の特徴
①原因は細菌性プラーク
②炎症は歯肉に限局
③歯肉ポケットが形成されるがアタッチメントロスはない
④プラークリテンションファクターによって増悪
※プラークリテンションファクター
→プラコンを困難にしたり細菌性プラークの停滞を促進する因子
⑤プラコンによって改善する
⑥歯周炎の前段階と考えられる

歯周炎の発症の特徴
①プラーク性歯肉炎が歯周炎に進行し、セメント質、歯根膜、歯槽骨が破壊される
②アタッチメントロスが生じポケットが形成
③ポケットが深くなると歯周病原細菌が増殖し炎症を持続させる

歯周炎の進行の特徴
①プラークリテンションファクターによって増悪
②外傷性咬合を併発すると急速に進行
③進行度に部位特異性がある
④休止期と活動期がある
⑤歯周炎が進行すると悪環境が生じさらに急速に進行

歯周治療の特徴
①原因除去によって改善あるいは進行停止する
②歯周治療の一環として生涯にわたる継続管理【サポーティブペリオドンタルセラピー SPT、メンテナンス、歯周病重症化予防治療】が不可欠

咬合性外傷の特徴
 主要な所見は歯の動揺とレントゲンにおける
 歯根膜腔の拡大、垂直性の骨吸収
①一次性咬合性外傷
👉過度な咬合力が加わる事で歯周組織に外傷が生じたもの
②二次性咬合性外傷
👉歯周炎の進行によって支持歯槽骨が減少して咬合負担能力が低下した歯の歯周組織に生じる外傷であり生理的な咬合力によっても起こる

咬合性外傷を引き起こす咬合を外傷性咬合という
原因→歯列不正、早期接触、咬頭干渉、ブラキシズム、過剰な咬合力、側方圧、舌と口唇の悪習癖、食片圧入など。

歯周治療への進め方
①全身性疾患への配慮。
全身的因子が歯周病の発症や進行に非常に重要な誘因。また、歯周病が全身性疾患の誘因になることも明らかになりつつある。患者個々の歯周病への易感染性、進行速度が異なったとしても、歯周病の原因である細菌性プラークを十分に取り除くことにより改善に向かう。
歯周病の発症や進行と深く関係のある全身性疾患(糖尿病や肥満、血液疾患)を有する患者では、歯周病の局所因子の除去を徹底し主治医と連携して改善を図ることが大切である。ストレスなどの環境因子も歯周病の進行を促すことが報告されている。

(1)有病者への配慮。
多種類の薬剤を服用しているケースが多く、歯周治療を開始前に十分に医療面接を行い、医師との医療連携体制を整えておく。
治療が可能な状態でも、術前の検査として最低限、安静時の血圧、心拍数、酸素飽和度を測定。治療中のバイタルサインをモニタリングすることが、合併症の予防のために必要。
歯科治療が困難となる症例は、早期に専門とする高次医療機関と連携をとり管理を依頼する。

(2)、糖尿病患者への配慮
血糖コントロール不良の糖尿病により、宿主の生体防御機能が低下している易感染性の歯周炎患者や動脈硬化性疾患により、血管内皮機能障害を有する歯周炎患者に対しては、歯周治療の反応性を向上させ、全身及び臓器への悪影響を減少させる目的で、抗菌療法の併用が推奨されている。

(3)、高齢者への配慮
加齢に伴う免疫機能の低下により、歯周病に対する抵抗性が低下する。口腔機能低下に伴い、誤嚥性肺炎を引き起こすことが多くなる。
特別な方法はないが、身体的機能の低下や全身性疾患を有することが多いので、患者の観察と既往歴、現病歴、服用薬剤について十分な情報を得る。また、誤嚥性肺炎の予防には、口腔内の汚染状態を評価し口腔内の清浄を保つことが必要である。

検査に基づいた診断、
治療計画と患者への説明と同意
👉歯周治療を適切に行うためには、現在の症状を的確に検査診断する必要がある。まず歯周組織検査を実施し、歯肉の炎症と組織破壊の程度を把握し、その結果をもとに必要に応じて主治医と連携をとり治療計画を立案する。
次に十分説明し、同意を得た後、治療計画に沿って進めていくことが大切。

歯周基本治療
(1)患者の治療への積極的な参加。
歯周治療にはセルフケアが重要なため、患者が積極的に参加できる環境作り、適切な口腔衛生指導。歯周病が細菌感染症であること、歯周病と全身性疾患や喫煙との関連性などを充分説明し、予防と治療の重要性を認識させる。

(2)プラークコントロールの確立
歯周治療の流れの基本は、すべての治療でプラークコントロールが持続的にできているかどうかにかかっている。プラークコントロールが確立されなければ、治療効果は充分得られない。

(3)プラークリテンションファクターの除去

(4)咀嚼機能の回復。
ん歯周組織に咬合性外傷を引き起こし歯周炎を増悪させる外傷性因子を除去する

(5)対症療法を慎む。
原因の除去を的確に行わず、歯肉の炎症や歯肉膿瘍、歯周膿瘍に対して単に抗菌薬や抗炎症薬を投与したり主張した部位の歯肉を切開排膿させたり動揺歯を固定するだけの治療は適切ではない。
このような治療法は【対症療法】とよばれ細菌性プラークを根本的に取り除くことにはならない。
原因除去を原則として歯周治療を進める必要がある。

歯周病における治癒と進行予防、病状安定
1)プラーク性歯肉炎。
歯周基本治療によって健康を回復し、再評価検査によって治癒あるいは進行予防の状態かを判定する。

2)歯周炎

3)進行予防
令和2年度の保険診療報酬改定に伴い、新たに導入された保険上の考え方。歯周病重症化予防治療

4)病状安定。
再評価後、1部分に4ミリ以上の歯周ポケットや軽度の動揺、根分岐部病変がある場合、臨床的に病状が安定していると考え「病状安定」と判定する。このような場合はSPtを実施。

5)病状進行。
継続管理中においてポケットが4ミリ超え、歯周病が進行したと考え「病状進行」と判定する。

①医療面接
患者が来院した主な理由、特に歯周治療に対し、希望する事項を尋ねる。コミニケーションを図り、治療を進めていく上で大切である。
出生が歯周病の場合には、歯周病に対する不安や自覚症状を十分に聞く。
歯科治療を考慮すべき全身性疾患に関し、全身の健康状態を把握する。さらに、歯周病と関連する全身性疾患(糖尿病、肥満、虚血性、心疾患、ご縁、性肺炎、そうだ、低体重児、出産、骨粗しょう症、免疫、アレルギー疾患など)や、環境因子(喫煙、ストレスなど)、さらには遺伝子因子についての情報得て理解しておく。
今の歳やで

③医科との連携
1)病状や投与薬剤についての照会
フェニトイン(抗てんかん薬・ヒダントイン系薬)、ニフェジピン(降圧薬、カルシウム、拮抗薬)、あるいはシクロスポリン(免疫抑制剤、カルシニューリン阻害薬)などによる薬物性歯肉増殖が疑われる場合は、その可能性を指摘し、処方薬剤について主治医に紹介する。

ビスフォスフォネートbp や抗RANKL抗体製剤は骨粗しょう症の治療薬として、がんの骨転移に対する薬物療法の骨修復薬として実用化されている。
これらの薬剤において、注意すべき有害事象の1つに顎骨壊死がある。適切な口腔衛生管理をする事は、BMA治療時のOMJの発症リスクを低下させるとの報告がある。

2)口腔内の観血処置に対する注意点
現在では、抜歯など歯科治療での観血処置は、抗血小板薬、抗凝固薬は可能な限り中止せずに行うことが一般的。

①歯周病検査。
検査の目的は、歯周病の進行程度や原因を把握し「正しい診断」と「適切な治療計画」を立てるための情報を得ることである。

1)歯周組織検査は以下の項目について行う
(1)歯肉の炎症、歯肉炎指数(gingival index GI)
プロービング子の出血(bleeding on probing BOP)などで評価する。

(2)プロービングデプス
6点法を基本
(3)アタッチメントレベル
セメントエナメル境などの基準点から、ポケット底までの距離を測定した値であり、歯周病の進行と改善の程度を知るための指標となる。
(4) 口腔衛生状態(オレリーのプラークコントロールレコード)
細菌性プラークの付着状態を記入し評価する。
(5)歯の動揺度
millerの歯の動揺度の分類を基本に行う。
0度(生理的動揺、0.2ミリ以内)、
1度(軽度、唇舌的に0.2から1ミリ)、
2度(中等度、唇舌、近遠心的に1から2ミリ)
3度(高度、唇舌、近遠心的に2ミリ以上、または垂直方向の動揺)に分けられる。
(6)X線画像
(7)歯列全体の咬合関係や、早期接触や咬頭干渉などによる外傷性咬合を調べる。
(8)根分岐部病変
多根歯を対象にファーケーションプローブなどを用いて進行度を3段階または4段階で分類する

・サポーティブペリオドンタルセラビー(supportive peresdontal therapy:
SPT)
歯周基本治療、歯周外科治療、口腔機能回復治療が終了し、歯周組織のほとんどは治癒したが、病変の進行が休止した歯周ポケットが残存した場合、歯周組織を長期にわたり病状安定させるための治療である。プラークコントロール、スケーリング・ルートプレーニング、咬合調整などの治療を中心に原因因子の除去に努め、作せて口腔衛生指導や再動機づけなどを行う。

・歯周病重症化予防治療
各園周治療後の再評価検査によって、プロービングデプスが4mm 未満に減少したが歯肉に炎症が若干残存する「進行予防」の状態では,歯周病が進行しやすいことから、進行を抑制させるたの治療である。モチベーションの紙持、プラークコントロールの強化、スケーリンク・ルートプレー
ニング、専門的機械的歯面清掃などを行う。

・メインテナンス
歯周病は再発しやすいので、「治療」状態でも定期的なメインテナンスは必須であり、プラー
コントロール、スケーリング・ルートブレーニング、咬合調整などを行う、メインテナンスは、歯周組織が臨床的に健康を回復した状態を長期に維持させるために、患者が行うセルフケア(ホームケア) と患者の治療への意欲を高めるための動機づけ(モチベーションおよび歯科医療従事者が行うプロフェッショナルケアからなる。

① 歯周基本治療の概念

補綴治療法の選択と注意点
(1) ブリッジ
ブリッジによる補綴は、支台歯のみで咬合力が負担されるため、欠損の範囲や残存歯の分布、支台歯の歯周組織の状態を考感して設計し、支合歯が負担過重にならないように配慮することが大切である。適切に設計されたプリッジは、固定効果により咬合性外傷の回避に有効となる。

治療計画
1)メインテナンス
再評価検査で【治癒】と判定された患者は再発を防止するために行う管理。
目的👉①歯周病再発の予防
   ②新たな歯周病発症部位の早期発見
   ③良好な歯周組織環境の長期にわたる維持
   
喫煙、食生活、飲酒などの生活習慣因子や、糖尿病などの全身性疾患を有する場合には、良好なプラコンを維持するため口腔衛生指導を中心とした管理と環境因子や全身的なリスクファクターに対する指導・管理が必要。
メインテナンスでは次回の来院時期決定も重要な項目。検査情報などから決定。

2)歯周病重症化予防治療(P重防)
再評価検査の結果EPPが4ミリ未満になったが、歯肉に炎症が残存しているような症例に対し歯周炎への移行や重症化を予防するために行う管理。
目的👉①歯周病の重症化予防
   ②新たな歯周病発症部位の早期発見
   ③良好な歯周組織環境の長期にわたる維持
リコール感覚は一般的に1〜3ヶ月

3)サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)
再評価検査で病状が安定したと判定された場合SPTに移行する。
①病状安定部位を維持
②新たな歯周病発症部位の早期発見
③良好な歯周組織環境の維持を目的とする